京都大学の野田進教授と三菱電機のグループは、半導体レーザー「フォトニック結晶レーザー (PCSEL)」において、これまでのレーザー素子単体では実現が困難であった高い出力と狭い固有スペクトル線幅の両立を実現した。
スペクトル線幅とは、出力されるレーザー光の周波数(波長)の揺らぎを示す指標。この線幅が狭いほど、レーザー光の純度が高くなり、可干渉性(コヒーレンス)が増大し、光の周波数や位相などの性質が利用しやすくなる。
宇宙応用においては、レーザー光源が小型で低消費電力、高出力であることが要求される。そのため、小型で安価、高効率という特長のある半導体レーザー素子単体で、高出力な狭スペクトル線幅動作を実現することは極めて重要だ。
研究グループは新たに直径1ミリメートルのPCSELを設計した。それによる実験の結果、5ワットという高い出力と1キロヘルツという極めて狭い固有スペクトル線幅の両立を世界で初めて実現した。今後はPCSELの高出力・高ビーム品質な特長をそのままに、さらなる狭線幅動作を目指すという。
野田准教授は「長年の半導体レーザーの課題でもあった高出力と狭線幅の両立をフォトニック結晶レーザーにおいて実現できたことは、学術的に重要な成果である」と説明。
また「フォトニック結晶レーザーが従来の半導体レーザーだけでなく、多種多様なレーザー光源を置き換える究極的なものであることを示す、産業的にも極めて重要な成果であると考えている」と評価している。