■ポイント■
◎レム睡眠中に脳幹で発生するP波が、マウスのノンレム睡眠でも発生していることを発見
◎レムP波は記憶固定化に重要な海馬脳波と協調し、ノンレム P 波は抑制していることを解明
◎同じ睡眠でも、レム睡眠とノンレム睡眠で担う生理的役割が異なる可能性を示唆
北海道大学大学院理学研究院の常松友美講師(前所属東北大学大学院生命科学研究科兼学際科学フロンティア研究所)らの研究グループは、英国ストラスクライド大学の坂田秀三准教授と共に、マウスを用いて、脳幹脳波であるP波と、記憶固定化に重要な海馬脳波との関係を検討し、ノンレム睡眠とレム睡眠で逆の働きをしていることを明らかにした。
P波は1950年代以降にネコやラットで発見されたが、半世紀以上もの間、マウスには存在しないと考えられており、近年研究が滞っていた。しかしながら、2020年に研究グループが世界で初めてマウスのP波の記録に成功している。
今回、新たにP波と海馬脳波との関連を検討したところ、ノンレム睡眠とレム睡眠で逆の働きをしていることが分かった。レム睡眠P波は海馬脳波と協調して作用していたが、ノンレム睡眠P波は海馬脳波を抑制していた。同じP波でありながら、ノンレム睡眠とレム睡眠では、記憶固定化で相反する役割を担っている可能性を明らかにした。これは、アカゲザルでも観測されている。
未だに誰も実験的に明らかにできていないが、P波は夢の発生メカニズムであると提唱されている。レム睡眠の夢は奇想天外でストーリー性が高いが、ノンレム睡眠の夢は短くて思考的といわれている。研究グループでは、「睡眠ステージによって夢の内容が異なるのは、P波の持つ生理的役割の違いが原因なのかもしれません。今後、明らかにしていく必要があります」としている。
この研究成果は7月21日公開のSLEEP誌にオンライン掲載された。