岡山大学の研究グループは無調動物「ナイカイムチョウウズムシ」の感覚器と神経系の関係、分子的基盤を明らかにした。無腸動物が有する表皮感覚細胞を介した刺激受容応答機構の全貌が判明したことで、左右相称動物の感覚の起源にさかのぼる分子機構の解明が期待されている。
ナイカイムチョウウズムシの表皮感覚毛細胞における刺激の受容から神経系への伝達に至る一連の分子機構の解明を目的とた。まずは感覚細胞を調べるため、研究グループは繊毛外皮に覆われている体表から突出している動かない毛の本体である表皮感覚細胞と神経との関わりを調査した。
感覚毛と繊毛に含まれる微小管を構成するたんぱく質「チューブリン」を緑色、「アクチン」を赤色にすると、表皮を覆う短い繊毛列から飛び出している感覚毛(緑)の基部にその微絨毛に由来する強いアクチン由来のシグナル(赤)が認められた。
体内からすべての感覚細胞に向かって神経繊維が延びていることも確認。表皮感覚細胞が神経系を介して情報の伝達を行っている可能性が示唆されている。
次に人の体でも機能している一過性受容体電位型(TRP)チャネル遺伝子群に着目した。
その結果、体表付近の表皮感覚細胞が位置している場所に、TRPpolycystin(TRPP)に分類され別称polycystic kidney disease 1, 2(PKD1, 2)(ヒト)に相同と推定される遺伝子群の発現が確認された。
これらは多くの後生動物で機械刺激や化学刺激の受容を担う分子とされ、人においては遺伝性嚢胞性腎疾患の原因遺伝子として同定されています。
本種ではTRPPの他にも複数種のTRP遺伝子が同定されており、本種の示す行動にこれらTRPチャネルの関与が示唆された。研究は無腸動物に発現するTRPサブファミリー遺伝子群の発現と局在を明らかにした初めての報告となった。