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北陸先端大准教授が「近隣環境とメタボ」の関連性を解明

○学校、公園、商店などの、住⺠にとって⽬的地となりうる「興味のある場所」の数が多く、活動的な⽣活に親和性の⾼い環境、また住居密度が⾼い地域では、メタボリックシンドロー

ムの危険因⼦が少ないことが分かった

〇このような環境では、ウォーキングや⾃転⾞での移動など、活動的な交通⼿段の選択を奨励することで、さらにメタボの危険性を減らせる可能性がある。

○この研究結果は、⾝体活動を奨励する地域を設計することの重要性を⽰している

北陸先端科学技術⼤学院⼤学(JAIST)創造社会デザイン研究領域のクサリ・モハマドジャバッド准教授らの研究グループは、カナダの成⼈を対象に、⾝体活動に適した建造環境とメタボリックシンドロームの関連について検討する研究を実施した。その結果、より活動的な⽣活を送るための選択肢が多く、⼈⼝密度が⾼い地域では住⺠のメタボリックシンドロームの危険性が低いことを発⾒し、近隣環境を整備することの重要性を強調した。

⼼⾎管疾患を予防する⼿段として、対象を明確にした政策とポピュレーション戦略の展開が広く認識されているなか、この研究の成果は、関連する政策やポピュレーション戦略を実践する上で重要な知⾒を提供している。

<研究の背景と具体的な研究の内容>

⻑年にわたり⼼⾎管疾患は世界の⼈々の主要な死亡原因となっている。⾼⾎圧や肥満に代表されるメタボは、⼼⾎管疾患発症の危険性を⼤幅に⾼める。定期的な⾝体活動やライフスタイルの改善は、メタボの予防と管理での重要な要因であることが確認されており、活動しやすい環境を作り出すことで、定期的な⾝体活動が促進され、メタボリックシンドローム発症の危険性が軽減されるが、残念ながら、近隣環境とメタボリックシンドローム罹患率との関連性について直接検討した研究は限られていた。

⼀⽅、近隣環境のデザインと質は、住⺠の健康に⼤きな影響を与えることがこれまでの研究から分かっている。

今回、JAISTのクサリ准教授(早稲⽥⼤学の研究員を兼任)らの研究グループは、近隣の建造環境とメタボの関連に関する新たな研究を実施した。その結果、より活動的な⽣活を送るための選択肢があり、⼈⼝密度が⾼いことが、住⺠のメタボの危険性が低いことと関連していることを発⾒し、メタボリックシンドロームを予防するために近隣環境を整備することの重要性を強調した。

具体的には、クサリ准教授が率いる⽇本とカナダの研究者グループは、カナダのアルバータ州全体の成⼈を対象にしたカナダ・アルバータ州最⼤の⻑期的健康調査のデータを利⽤し、横断的な検討を⾏った。

同プロジェクトの調査を完了し、⾝体計測を受け、⽣体サンプルを提供した都市部に居住する⼥性4455名、男性 2263名の計6718名のデータを分析に⽤いた。対象者の平均年齢は54歳で、34%がメタボリックシンドロームを保有していました。近隣環境の指標としては、各参加者の近隣のグリーンネス(緑地の程度)を評価するとともに、住居密度、交差点の数、興味のある場所(⽬的地)の数など、⾝体活動に関連する地域環境の特徴も調査した。

研究の結果、学校、公園、商店など⽬的地となりうる「興味のある場所」の数が多く、活動的な⽣活に親和性の⾼い環境に居住する対象者は、メタボの危険性が低いことが⽰された。基本的に、より多くの⽬的地・歩きやすさ・⾝体活動の機会が提供される環境に居住することは、メタボの危険性が低いことにつながっている。

興味深いことに、今回、住居密度が⾼い地域でもメタボリックシンドロームの危険性が低いことが分かった。これは、魅⼒あるアメニティへのアクセスが増え、社会的交流が促進され、⾞への依存度が減ることに起因すると考えられる。

このような環境では、ウォーキングや⾃転⾞移動のような活動的な交通⼿段を選択することを住⺠に促すことで、さらにメタボリックヘルスを⾼められる可能性があるという。

今回の研究成果はこれまでの先⾏研究の知⾒と⼀致しており、⽬的地の数が多く、住居密度が⾼く、全体的に活動的な⽣活に親和性の⾼いことを特徴とする地域での居住は、メタボになる可能性が低いことと関連していることを⽰唆している。さらに、⾝体活動を奨励する地域を設計することの重要性を⽰しており、⾝体活動は住⺠全体の健康を⼤幅に改善する可能性があると結論づけている。