近畿⼤学農学部(奈良市)環境管理学科4年(執筆当時)の⼭本真帆さんと同学科の井上昭夫教授は、昭和60年(1985年)から平成17年(2005年)までのわが国⽵林の炭素蓄積量の変化を予測し、主要な⽵の⼀種であるモウソウチク林の管理放棄と分布拡⼤の相乗作⽤により、国内の⽵林での炭素蓄積量が増加していることを明らかにした。また、国内のモウソウチク林は中国や台湾のような海外のものに⽐べて過密になっており、この研究で明らかにした⽵林での炭素蓄積量の増加は、望ましくない現象であることを指摘した。
これらの知⾒は、気候変動の緩和に向けて⽵林管理政策を考え、⽵林管理戦略の最適化を進める上での基礎となるものといえる。
この研究に関する論⽂は、森林科学分野の国際学術誌である「ジャーナルオブフォレストリサーチ」に掲載された。
■顕著に高いタケの炭素吸収能力
森林は、⼤気中の炭素を吸収・蓄積することによって、気候変動の緩和に貢献している。なかでも⽵は、タケノコとして地上に現れてからわずか2〜3ヵ月で急速に成⻑し、植物のなかでも特に⾼い炭素吸収能⼒を備えているため、気候変動の緩和への貢献が期待されている。
このため、近年、インドや中国のように⽵資源の豊富なアジアの国々では、地域・国家レベルで研究に取り組んでおり、⽵林における炭素蓄積量に関する報告が増えている。
⼀⽅、わが国では、森林での炭素蓄積量に関する研究はあるものの、解析から⽵林は除外されており、⽵林の炭素蓄積量を地域・国家レベルで分析した研究はこれまでなかった。このような知⾒の不⾜のために、わが国の⽵林は、森林と地球温暖化に関する議論の中で⾒落とされてきた。