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ヒサカキの土壌崩壊への影響 兵庫県農水センターなど共同研究Gが世界初解明 里山管理の手法を裏付け

兵庫県立農林水産技術総合センターなど6機関による共同研究グループは、放置された里山に多く生育する樹木「ヒサカキ」について、個体あたりの幹数の違いが斜面の土壌崩壊に及ぼす影響を世界で初めて明らかにした。幹を間引く意義を科学的に支持し、里山の管理手法の裏付けとして期待される。

研究グループは神戸市の里山で、胸の高さが異なる単数幹と複数幹のヒサカキ3個体を選んで伐採。直径1ミリメートル以上の根が乱れないように、地表面から少しずつ根を露出させて根の位置と直径を計測。最終的に根全体を掘り出し、地上と地下部の重量と根株から同心円状に5センチメートル間隔で位置と直径を測った。

その結果、単数幹は水や養分の流れが地上の幹と地下の根で連続するパイプであり、複数幹はこうしたパイプの集合体であることが示唆された。また、複数の幹をもつヒサカキは単数の幹と比較し、土壌崩壊に対する抵抗力は弱いことが分かっている。

研究グループは「伝統的な里山管理、すなわち個体に複数ある幹を間引いて単数の幹とする作業は、残った幹の直径を太らせる」と説明。「この作業は、長期的に斜面の安定効果を発揮し、土壌崩壊に対する抵抗力を高める可能性がある」と講評した。