酸化ストレスはさまざまながんのリスク要因と考えられているが、がんを引き起こす分子メカニズムには不明な点が多く残っている。九州⼤学と国⽴環境研究所の研究グループは、酸化されたDNAが引き起こす変異が消化管がんの原因となることを明らかにした。発がん率の軽減にも役立つ可能性がありそうだ。
研究チームはマウスに酸化剤を含む⽔と通常の⽔を与え、⼩腸でのDNAの変異やがんの発⽣頻度を解析した。
すると、DNA修復酵素である「MUTYH」の機能を⽋損させたマウスは酸化ストレス状態が続くと、早い段階で正常組織内でのDNA変異が増加。その後の発がん頻度も増えた。
変異の中でも特に塩基「グアニン」の酸化によって引き起こされる反応の頻度が、酸化剤の濃度とがんの頻度に関連していた。さらに、塩基配列内に存在するグアニンが酸化されやすいDNAの性質が、細胞増殖シグナルを過度に活性化させ消化管発がんの原因となるような遺伝⼦変異の発⽣に影響していることを明らかにしている。
⼀⽅、MUTYHが正常に働いている野⽣型マウスは、酸化剤の濃度が上がっても変異とがんの発⽣頻度は少ししか多くならなかった。このことから、MUTYHが酸化グアニンによる突然変異を減らすことで、ストレスによる消化管がんの発⽣を抑制していると分かっている。
研究グループは「突然変異とがん発⽣のメカニズムの理解を深める⼀⽅で、人の遺伝性⼤腸がん家系での⽣涯発がん率の軽減⽅法の探索にも役⽴つ可能性がある」としている。