東京農工大学と山梨県富士山科学研究所、麻布大学の共同研究チームはニホンカモシカの食物の選り好みを解明した。消化しやすく高栄養な落葉広葉樹(葉・果実・冬芽)や広葉草本(葉・花)を好み、消化しにくいササやイネ科、針葉樹を嫌っていることが明らかになったとしている。
研究チームは長野県小諸市に位置する浅間山麓の森林で、2012年10月~14年5月にかけて毎月5~7日間の調査を実施した。調査地に生息するカモシカを麻酔銃で捕獲し、発信機を装着。発せられる電波をたよりにカモシカを捜索し、その行動を追跡して採食行動を観察した。
その結果、カモシカが何かを口に運ぶ採食行動を計5910回確認した。食物の選り好みを評価したところ、どの個体も消化しやすく高栄養な落葉広葉樹や広葉草本を好み、消化しづらいササやイネ科草本、針葉樹を嫌っていることが判明した。
また、落葉広葉樹や広葉草本が落葉する冬季には、緑のまま葉を維持するシダを好んで採食していることが分かった。
これらのことから、カモシカは生息環境の中から良質な食べ物を好き嫌いして採食していることが示唆された。さらに、個体ごとの食性の違いは行動圏の中に生えている植物の供給によって左右されることが示されている。
研究チームは「年間を通じて落葉広葉樹や広葉草本、冬季にはシダがカモシカの食物として非常に重要であることを示した」と評価。「カモシカの好むこれらの植物が健全に生育できる森林環境を守っていくことがカモシカの保全につながる」と説明している。