東京慈恵会医科大学の研究グループは、かずさDNA研究所と共同で新規肺炎球菌ワクチンによる抗体産生に重要な役割を担う「機能的iNKT細胞」の誘導に関する免疫学的プロセスを明らかにした。この知見は感染防御効果をもたらすワクチン開発などにつながりそうだ。
研究ではほとんどの肺炎球菌が保有するたんぱく質をワクチン抗原とし、リンパ球のインバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞を特異的に活性化する糖脂質をアジュバントとした新規肺炎球菌ワクチンを用いた。
ワクチンをマウスに接種すると、肺炎球菌ワクチン抗原に対する特異的抗体の産生が促進されることが分かった。だが、どのようにして機能的なiNKT細胞が誘導され、効率よく特異的抗体産生を促進しているのか、そのメカニズムは不明であった。
研究にてマウスにワクチンを接種すると、接種後早期にインターロイキン27(IL-27)という因子が産生され、機能的なiNKT細胞の誘導に重要な役割を担うことを発見した。
また解析により、このワクチンの効果誘導にはIL-27を介したiNKT細胞のミトコンドリア代謝制御が重要であることが明らかになっている。
iNKT細胞を介した免疫ふ活作用は、肺炎球菌感染症のみならずさまざまな感染症のワクチンに応用可能であり、新興感染症に対する予防戦略の1つになることが期待されている。
研究グループは「今回得られた知見を踏まえて、肺炎球菌感染症に対する幅広い感染防御効果をもたらすワクチンの開発を目指すと共に、他の感染症を含めて効果的なワクチンの開発への応用も検討していきたいと考えたい」としている。