東京大学の山岸誠准教授らによる研究グループは、分子メカニズムの異常「エピゲノム異常」に対する新しい阻害薬が多くのがん抑制遺伝子の発現を回復させ、治療の難しい血液がん患者に対して持続的な効果を示す仕組みの解明に世界で初めて成功した。21日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載されている。
研究チームは、日本発の新薬であるメチル化ヒストン阻害薬「バレメトスタット」の治療を受けた成人のT細胞白血病リンパ腫(ATL)患者の体内でどのような変化が起こるかを遺伝子発現とエピゲノムを同時に解析できる技術を組み合わせて観測した。
その結果、抑えられていたがん抑制遺伝子の発現は、バレメトスタットによる治療開始後から徐々に正常化しDNAに変異が多数蓄積した高悪性度のがん細胞の増殖を長期間抑制することを初めて観測した。また長期治療後に発生しやすい薬剤耐性化のメカニズムも明らかにしている。
山岸准教授らは「エピゲノム異常の修復が難治がんに有効である根拠とともに将来の課題に対する解決の糸口を示した点において、社会的意義が非常に大きい」と評価している。