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「薬剤の適用拡大」で運動学習能力向上 大阪公大研究員らが実証 医療費削減にも貢献

大阪公立大学の橋本遵一客員研究員らの研究グループは、強心剤「ジゴキシン」を低濃度で投与することで新生スパインを増加させると発見した。運動だけでなく神経機能回復に貢献し、効率的な薬剤の臨床適用や医療費の削減などにつながる可能性がある。ドラッグ・リポジショニング(薬剤の適用拡大)として、効率的な臨床適用が可能であることを明らかにした。

研究では正常なマウスと神経細胞の接続などに寄与する「スパイン」に障害のあるマウスにジゴキシンを投与し、新生スパインの数が増えるかどうか、また運動学習能力が向上するかどうかを検討した。

それによると、低濃度のジゴキシンを投与した正常なマウスは、していないマウスに比べて新生スパインに特徴的な構造である長いスパインの数が大脳皮質で増加していることを発見。また、この効果はスパイン新生機能に障害のあるマウスでも見られた。一方、短いスパインの数には影響を与えていない。

また、正常なマウスではジゴキシンを投与した場合、しなかったマウスに比べて運動成績が上昇した。スパイン新生機能に障害のあるマウスは、与えていない状態では正常なマウスに比べて成績が低かったものの、低濃度のジゴキシンを適用することで運動成績が正常なマウスと同レベルにまで上昇した。

特にこの系統のマウスでは、人の臨床で用いられている濃度のジゴキシンでも有効に作用し、運動能力が向上した。この結果は、ジゴキシンが学習に伴うシナプス形成に何らかの異常を持つ個体で、より効果的に作用を発揮する可能性を示している。

研究グループは「スパインの新生は運動機能のみならず、認知機能などの神経機能回復にも役立つかもしれない」と指摘。「ジゴキシンを神経機能のリハビリテーションにも適用することができれば、薬剤の適応拡大として効率的な臨床適用が可能だ」とコメントしている。