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トリプルネガティブ型乳がんの発症機構 広島大が解明 「たんぱく質AIbZIP、がん細胞の増殖を引き起こす」 

広島大学の今泉和則教授らの研究グループは、乳がんの1つであるトリプルネガティブ型乳がん(TNBC)で発現量が増加しているたんぱく質AIbZIPを発見した。この成果はさまざまながんの発症や仕組みの解明につながる可能性もある。

TNBCは発症機序の全容解明に至っておらず、明確な治療標的も未発見。各種抗がん剤投与などの維持療法が行われるが、明らかな効果が認められる治療法は確立されていない。TNBCの有効な診断マーカーや治療標的の確定、それらを元にした根本的治療戦略の確立が望まれている。

がんの治療に興味をもった広島大の学生が、自主的に腫瘍組織におけるAIbZIPの発現量を調べる研究をスタートさせた。すると、前立腺がん以外にTNBCでもAIbZIPの発現量が増加していることが分かったという。

また、遺伝子ノックダウンによってAIbZIPの発現量を低下させると、TNBC細胞の増殖速度が低下すると判明。AIbZIPがTNBC細胞の増殖を引き起こす原因は、AIbZIPが細胞周期を抑制する働きをもつたんぱく質「p27」を分解するシステムを活性化するためであることを突き止めている。

研究グループは「AIbZIPはTNBC以外にも前立腺がんなどで、その量が増加している」と指摘。「今回の成果はがん種の発症や増悪に至る仕組みの解明につながり、新規治療戦略の確立にも発展する可能性がある」としている。