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「電気化学の100年来の未解決問題」 東大研究Gが1世紀ぶりに解答 固体と液体を繋ぐ新理論構築

東京大学の山田淳夫教授らのグループは、固体科学の概念を液体である電解液に展開し、電極-イオン間の電子授受のしやすさを記述する電気化学理論モデルを新たに提唱した。低炭素で持続可能社会の実現に向けたエネルギー貯蔵技術の性能向上に貢献するかもしれない。

カーボンニュートラルを達成するには、太陽光や風力などの再生可能1次エネルギーによる発電システムの導入や電気自動車の普及が必須。電気エネルギーを柔軟に受給できる蓄電システムの開発が不可欠だ。だが、蓄電池材料の自在設計には、濃厚電解液の電極電位を定量的に記述できる理論モデルの構築が求められた。

研究グループは、固体科学の概念である「マーデルングポテンシャル」を液体系に展開し、濃厚電解液における電極電位を定量的に記述する電気化学の新たな理論モデル「液相マーデルングポテンシャル」を提唱した。

研究では数値シミュレーションを用い、リチウムイオンと周辺化学種とのクーロン相互作用を計算することで、電解液中でリチウムイオンの感じる静電的な居心地の良さ(液相マーデルングポテンシャル)を求めた。

電解液の濃厚化による液相マーデルングポテンシャルの変化分を電位シフトに換算すると、実験で測定した電極電位上昇分を精度良く再現できることが分かった。 また、電解液に依存して電極電位がシフトする物理的起源が、電解液中のリチウムイオン周囲の配位環境の変化による静電的な不安定化に起因することを明らかにしている。

研究グループは「これは1世紀もの長きにわたり電気化学分野で強く希求されながら達成できなかった理論的進展であり、本質的知見に基づく電池材料の全体最適化が可能となる」としている。