東京理科大学の椎名勇教授らの研究グループは、シキミ属植物「イリシウム・メリリアヌム」の果皮に含まれる天然化合物メリリアニンを世界で初めて人工的に合成することに成功した。メリリアニンをはじめとする生物活性の解明や抗リウマチ薬などの神経系疾患治療薬開発に貢献しそうだ。
メリリアニンはシキミ属植物イリシウム・メリリアヌムから取り出された天然有機化合物。メリリアニンには抗リウマチ活性が期待されており、神経系疾患の治療薬成分として注目を集めている。
研究グループは今回、不斉向山アルドール反応と分子内環化反応を活用することで、メリリアニンの不斉全合成の実現を試みた。
研究グループは(−)-メリリアニンの逆合成解析を行い、合成経路に関する検討を行った。実際の合成では不斉向山アルドール反応、SmI₂による還元的分子内環化反応、分子内マイケル付加、ワッカー型酸化反応などを活用。30の最長直線工程を経て、(−)-メリリアニンの不斉全合成に成功した。
総収率は 1.6%で、(−)-メリリアニンの絶対立体配置を決定することもできた。この研究では三環式のジラクトンを主要な中間体として得ることも可能であったため、他のイリシウムセスキテルペン類似体の合成への応用が期待できるという。
椎名教授は「イリシウムセスキテルペンは神経系疾患に対しての効果が期待される化合物群でありながら、高度に酸化や縮環した構造から人工合成が困難とされてきた」と紹介。「神経系疾患の治療に貢献できるリード化合物を創出したいという思いから研究を重ね、最終的にメリリアニンの不斉全合成を達成することができた」と振り返った。