■研究のポイント□
◎⽣物毒性物質であるフェノールの分解処理に関するエンジニアリングデータを取得
◎フェノール廃⽔の分解に関与する微⽣物群を特定、さらにバルキング現象の原因となる未知微⽣物を推定
◎フェノールなどの有害物質を含む産業廃⽔を処理する設備の安定管理へ貢献
国⽴研究開発法⼈産業技術総合研究所と鹿児島高専の研究グループは、酸素のない環境(嫌気性環境)で、廃⽔に含まれるフェノールの分解に関与している微⽣物群を特定し、分解経路を推定した。さらに、廃⽔処理反応器の運転温度が変化すると、汚泥顆粒が肥⼤化し反応器外へ流出する〝バルキング現象〟が発⽣することを確認し、その原因となる微⽣物を推定した。
ひとたびバルキング現象が発⽣すると、廃⽔処理反応器内の汚泥顆粒を新しいものに⼊れ替える必要があり、製造⼯場全体へ影響を与えることから重⼤な問題となっているが、その原因は完全に解明されていないのが現状。
また、嫌気性廃⽔処理でのバルキング現象の知⾒は、製糖⼯場廃⽔などに限られている。産業廃⽔で広く⽤いられる嫌気性廃⽔処理法の適切な運転管理のために、解析対象とする廃⽔種を拡⼤し、知⾒を蓄積する必要があった。
この研究では、⽣物毒性を有する芳⾹族化合物であるフェノールを⾼濃度で含む廃⽔を対象として、約7.5年間 の⻑期的な連続処理実験により、微⽣物群を詳細に解析した。その結果、フェノールの分解産物からメタンを⽣成するメタン⽣成アーキアと共⽣あるいは寄⽣する未知微⽣物が、バルキング現象に関与していることを推定した。
この技術の詳細は、2⽉6⽇に国際⽔協会の国際学術誌「Water Research」に掲載された。