植物は気温の低下を感知すると凍結耐性を高めることができる。これを低温馴化(ていおんじゅんか)といい、植物が冬を越すための重要な生存戦略と考えられている。低温馴化では様々な変化が細胞内で起きていることが明らかになっているが、植物細胞を取り囲んでいる「細胞壁」でどのような変化が起こっているのか、ほとんど明らかになっていなかった。
埼玉大学大学院理工学研究科の高橋大輔助教らと、大阪公立大学大学院理学研究科の曽我康一教 授、東京工業大学生命理工学院の城所聡助教は、オーストラリアとドイツの研究者らと共同で、植物の細胞壁 1多糖の一種である『β‐1,4-ガラクタン』が低温馴化により増加し、凍結耐性の上昇に寄与していることを発見した。
研究グループは、植物が気温の低下を感じて凍結環境への耐性を高める〝冬支度〟である低温馴化の過程で、細胞壁成分の一種であるガラクタンが増加することを突き止めた。このよう反応は、今回の研究で主に用いたモデル植物シロイヌナズナだけではなく、ホウレンソウやシュンギクなどの他の凍結耐性が高い野菜でも広くみられる現象。また、『β‐1,4‐ガラクタン』は低温馴化過程での凍結耐性の向上や、組織の物理的性質の変化に寄与していることが明らかになった。