北海道大学と北海道立総合研究機構の研究グループは、胎生メバルの雄成熟度と関連する血液マーカーを初めて発見した。種苗生産及び養殖の効率化に大きく貢献すると期待されている。
メバルは繁殖期に現れる体色の婚姻色が現れず、精子も少なく絞り出せないことなどから、見た目だけではなく、確実に成熟した雄を見分けられる技術の開発が望まれていた。
研究グループはメバルの繁殖生理に関する基礎研究を行っていた際に、メバルの雄は雌と交尾する季節に膀胱(ぼうこう)の中に多量のたんぱく質を含む尿を蓄積することを見いだした。
その雄尿から、新規たんぱく質「リポカリン」を発見した。更に研究を進めると、興味深いことに、このリポカリンと類似したたんぱく質が、メバルの血液中にも存在することが分かった。
その後、研究グループは2021年の交尾期に野外で採取した胎生メバルのリポカリン様たんぱく質濃度を測定した。
その結果、雄の濃度は、雌と比べて高い値を示しました。また、飼育されたメバルについて、1年間定期的に血液を採取した。すると、リポカリン様たんぱく質濃度の変動を調べたところ雄では生殖腺サイズの変動とほぼ一致していた。一方で、雌ではそのような動態は観察されなかった。
リポカリン様たんぱく質と雄の成熟度には強い関連性があり、またこのたんぱく質の血中濃度を指標として、人工授精の際に精子を持った雄を高精度で選別できることが明らかになったと説明している。
研究グループは「この研究はメバル類の雄の成熟度と関連した血液中たんぱく質マーカーを初めて見いだしたものであり、その種苗生産現場における成熟雄選別の効率化に貢献する」としている。