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平滑筋⾁腫の免疫逃避分⼦「EPCAM」 九大教授らが発⾒ 新たな治療法の開発に期待

九州⼤学の中島康晴教授らの研究グループは平滑(へいかつ)筋⾁腫の遠隔転移で最も頻度の多い肺転移では、抗腫瘍効果をもたらす細胞傷害性T細胞の浸潤が減少しており、分⼦「EPCAM」が関わっていることを明らかにした。この発見は新たな治療法の開発にもつながりそうだ。

平滑筋⾁腫は全⾝のあらゆる場所に⽣じ得る悪性軟部腫瘍であり、切除可能であれば⼿術による外科的排除が有効だ。だが、できないものに対しては治療⽅法がなく、遠隔転移がある場合は5年⽣存率が20%を下回り、極めて予後が不良である。

悪性腫瘍に対する新たな治療⽅法として免疫療法が注⽬されているが、平滑筋⾁腫にはほとんど効果がない。研究グループはその原因を突き⽌めて新たな治療標的を探るべく、最も頻度の多い遠隔転移である肺転移に着⽬して研究を⾏った。

それによると、平滑筋⾁腫の肺転移では、原発と⽐べて細胞傷害性T細胞の侵入が減少しており、これを増やすことで予後が改善すると分かった。また、EPCAMを阻害することでT細胞の浸潤は回復し、抗腫瘍効果を発揮して予後の改善が期待されるという。

中島教授らは「本研究により、転移性平滑筋⾁腫に対する新たな治療標的が明らかとなった」とし「今回の知⾒は他の悪性腫瘍に応⽤できる」と説明している。

肺転移で発現上昇したEPCAMの阻害により細胞傷害性 T 細胞の遊⾛が回復する