東京薬科大学など4機関からなる研究グループは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)においてたんぱく質「MAP1B」はがん細胞が他の部分に広がる浸潤を促進していることを発見した。新たな治療薬や診断薬の開発につながることが期待されている。
MAP1Bは神経細胞の軸索や樹状突起といった神経突起の伸長と安定化に関わっていることが知られている。だが、がんとの関連については知られておらず、発現が認められるいくつかのがん細胞においてもその機能の詳細は明らかになっていなかった。
日本では毎年9万人以上が新たに乳がんに診断されている。乳がんはその特徴から大きく「LuminalA」、「LuminalB」、「HER2+」、「トリプルネガティブ(TNBC)」に分けられる。特にTNBCでは、がん細胞の増殖が速く、細胞が周辺の組織や他の臓器に広がる浸潤や転移に至る可能性が高い。
研究ではMAP1B がトリプルネガティブ(TNBC)患者のがん組織やTNBC細胞株で高発現していることを見いだした。これらの患者のがん組織や細胞株でMAP1BがメッセンジャーRNA、たんぱく質レベルで高発現していることを確認した。MAP1Bの発現が多いTNBC患者のグループは低いグループと比べて、予後が悪いことも判明している。
またMAP1Bは、がん細胞がもつ特殊な構造「浸潤突起」の形成に関わるたんぱく質Tks5をオートファジーによる分解から守ることでがん細胞の転移能を高めていることが明らかになった。
研究グループは今後について「MAP1BやTks5は今回明らかにした浸潤転移のみならず、TNBC細胞の増殖や腫瘍形成能にも関わる結果が得られており、それらの機構についても今後詳細を明らかにしていく予定」とし「難治性TNBCの発症・病態の分子機構の一端が明らかとなり、新たな診断薬・治療薬開発につながることが期待される」と説明している。