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微生物群衆の成り立ちを相互作用から推測 兵庫県立大・静大・阪大が新手法開発 正確な挙動理解に寄与 

兵庫県立大学と静岡大学、大阪大学の共同研究グループは、競争や協力といった種間相互作用の情報をもとに微生物群集の成り立ちを予測する手法の開発に成功した。この手法は、地球環境における微生物群集の挙動を正確に理解することに寄与し、適切な微生物群の利用や管理に役立ちそうだ。

研究では、複雑な微生物群の成り立ちを理解するために、微生物の競争や協力などの関係性という現象に注目。水生生物「ユウキクサ」を無菌化し、7種の微生物を共生させる人口生態系を作り、相互作用と微生物群衆の構造をデータ化した。

データを解析すると、これまで微生物の相互作用は主に2種の間で起こるものと考えられていた。だが、3種以上が存在することで初めて観察される作用が多数あることが分かった。そのため、2種間の関係性を完璧に把握しても理解したことにはならず、正確な予測は不可能となる。

そこで研究では相互作用を考える基本単位を2から3種に変更。3種間の予測モデルを開発したところ、4~7種の微生物群の構造を正確に予測できた。基本単位を4から5に変えても、予測精度は変化しなかった。これは相互作用が起こる最小単位である3種から把握することが挙動を理解する上で有用な方法であると示唆している。

研究グループは「研究で提案した『3種の組み合わせの情報から複雑な微生物群集を理解する』というアプローチを活用することで、複雑な微生物群集を理解し、より上手く扱うための技術開発につながる」と評している。

【開発した数理モデルの概要】少数の微生物種の組み合わせの情報
から、多様な微生物群集の構造を予測する。2種の相互作用のみを
考慮するモデルで予測された微生物群集(Pred_pair)は
実際に観察された微生物群集(Observed)と大きく異なる
が、3種の相互作用 を考慮したモデルの予測結果(Pred_tr
io)は観察結果とよく一致した