核融合科学研究所と東京大学の研究グループは、人工磁気圏「RT-1装置」を使った実験研究を行い、ダイポール磁場中のプラズマが波動「コーラス放射」を自発的に作り出すことを発見した。また、そのために必要な条件も明らかにしている。
RT-1は超伝導コイルを磁気浮上させ、惑星磁気圏型のダイポール磁場を実験室に作り出す装置。高温超伝導技術の活用により、110キログラムのコイルを真空容器の中で磁気浮上させ、その磁場によりプラズマを閉じ込める。これにより、地上にありながら惑星磁気圏に近い環境でプラズマを生成することが可能となる。
研究ではRT-1の真空容器に水素ガスを封入してマイクロ波を入射し、主に電子を加熱することで高性能の水素プラズマを生成した。実験ではさまざまな状態のプラズマを作り、磁場や電場の波がどのように発生するかを調べている。
その結果、プラズマの中に高いエネルギーを持つ高温電子が存在する時、プラズマが自発的にコーラス放射状の電磁波「ホイッスラー波」を作り出すことが明らかになった。
さらに、コーラス放射の発生とプラズマの密度及び高温電子の状態に注目して、プラズマが作るコーラス放射の波の強さと発生頻度を計測した。
すると、放射の発生はプラズマの圧力を担う高温電子の増大により駆動され、プラズマ全体の密度を向上させることでコーラス放射の発生を抑制する効果があることが分かった。
研究グループは「得られた成果は核融合プラズマと宇宙プラズマに共通する物理現象の理解に向けた一歩であり、今後、両分野が協力を深めながら研究が進展することが期待される」とコメントしている。