東京農工大学の村上智亮准教授らの研究グループは、国内のサファリパークで死亡した高齢のホワイトライオン4例を病理学的に検索し、アポC-IIIアミロイドーシスを同定した。人以外で発見されたのは今回が初めて。
アミロイドーシスは、生体由来のたんぱく質の誤った折りたたみによって生じる「アミロイド」がさまざまな組織に沈着することによって引き起こされる疾患グループ。原因となるたんぱく質の違いによってアルツハイマー病やAAアミロイドーシスなど人では42の病気に分類されている。
研究チームはさまざまな動物の病理検査を進める中で、国内の飼育施設にて19歳で死亡したホワイトライオンにて、腎臓の皮髄境界部への重度のアミロイド沈着を特徴とする全身性アミロイドーシスが生じていることを発見した。
ホワイトライオンにおけるこの疾患の発生状況を調べるため、過去に死亡した5頭のホワイトライオンを再検査したところ0.5歳と10歳の個体は陰性であったが、19~21歳のホワイトライオン3頭が同じ病態を発症していた。また、ライオンのアポC-IIIアミロイドーシスは、人と異なり遺伝性ではなく加齢性疾患である可能性を示唆していた。
村上准教授らは「野生下ではほとんど発生することが無かったはずの長寿のもたらす病気が新たに顕在化し始めている」と指摘。「長寿化と老年病は切っても切れない関係であり、飼育動物における加齢性アミロイドーシスについては、今後も継続的な監視が必要そうだ」としている。