九州⼤学の遠藤誠講師らの研究グループは、人工知能(AI)のアルゴリズム「ディープラーニング」を⽤いて、抗がん剤治療後の⾻⾁腫患者の病理組織を評価することで、⽣き延びた腫瘍細胞を算出。患者の⽣命予後を正確に予測できることを初めて明らかにした。残存するがん細胞の密度で予後予測ができる可能性が示唆されている。
骨のがん「骨肉腫」の治療では、がん細胞の壊死率を評価することで予後予測が行われる。だが、現在の方法では壊死面積として産出され、抗がん剤の効果を反映できていない問題があった。その解決のために治療後に生き延びた腫瘍細胞を検出するAIを構築し、算出された予後予測の有用性を検証した。
研究グループは九州⼤学病院で⼿術が⾏われた⾻⾁腫患者を対象に研究を行った。まず、
ディープラーニングを⽤いて、術後に残存した腫瘍細胞を検出するモデルを構築。次に、算出した残存腫瘍細胞密度による⽣存解析を⾏った。
その結果、AIモデルの性能は病理医と⽐較して遜⾊がなく、残存腫瘍細胞密度により、患者の予後を適切に予測できることが⽰された。
遠藤講師らは今後について「今回の研究が実際の診療に応⽤されるには、倫理⾯を含む多くのステップが必要」と指摘。その一方で、「今後、研究が進んでいない⾻⾁腫などの珍しい疾患にこそ、AIを積極的に応⽤していきたい」と力を込めている。