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モーターたんぱく質の物性評価 東大教授らが「キネシン」と「ダイニン」の輸送速度上限の相違発見 生きている固体内の力学性質を明らかに

東京大学の林久美子教授と東北大学の直井拓磨氏は、細胞内の物資輸送を担うモーターたんぱく質「キネシン」と「ダイニン」における力学性質の違いを示した。生きている固体内の力学性質を明らかにし、速度上限の違いを解析によって明らかにしたという。

それぞれに蛍光物質をつけた後、その動きを線虫の体内で観察した。速度データの解析からワイブル型に分類されたが、ダイニンの速度には極限値が存在せず、ワイブル型に分類されたキネシンとは異なる力学特性をもっていることが分かった。

次に、モーターたんぱく質の速度の負荷依存性に注目。モーターたんぱく質輸送モデルのシミュレーション結果から、下に凸の速度-負荷関係を用いると速度が収束せず、ワイブル型にならないことが分かった。

速度が負荷に敏感であるとまれに非常に大きい速度値を発生し、極値が存在しないデータの振る舞いを見せる。つまり、輸送速度の負荷依存性として、ワイブル型に分類されるキネシンは上に凸の関数、極値を持たないダイニンは下に凸の関数であると推測できる。

平均値で見るとあまり区別がつかないキネシンとダイニンの速度データだが、平均値からの外れ値に注目する極値統計解析により、キネシンとダイニンが異なる力学特性を持っていると理解できた。

これまで、モーターたんぱく質の速度の負荷依存性は光ピンセットを用いたガラスチャンバー内の1分子実験で調べられてきた力学性質であった。今回、初めて生きている個体内での力学性質を明らかにし、これまでの解析では知り得なかった速度上限の違いを極値統計解析によって初めて得ることができた。

研究グループは「アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患では、モーターたんぱく質の変異による物流障害が指摘されているため、今回開発した極値統計学による解析手法を用いることで、モーターたんぱく質の変異に起因する神経疾患の分子メカニズムの解明への寄与が期待される」とコメントしている。