学習院⼤学など4大学からなる研究チームは、アルツハイマー病の発症前にVRゴーグルを⽤いて脳の異常を検出する新たな⽅法の開発に成功した。これにより安価で⾮侵襲的、簡単に脳の状態を知ることができ、人のアルツハイマー予防や治療に役⽴てられるという。
アルツハイマー病の認知症発症に関係すると考えられているたんぱく質「リン酸化タウ」の蓄積と、脳の空間認知機能「経路統合能」の低下との関係を調べた。経路統合能は、脳の側頭葉内側にある「嗅内野(きゅうないや)」が担う。
研究チームは、VRゴーグルを⽤いて経路統合能を測定する⽅法を開発した。被験者は、ゴーグルで⾒える仮想空間で三⾓形の経路を歩き、スタート地点へ戻るように指⽰される。このとき、被験者が歩いた距離や⽅向を正確に判断できるかどうかを評価した。
その結果、経路統合能が低下している各年齢群の被験者の割合が嗅内野に神経原線維の変化が出現している⼈の割合と⼀致することが分かった。
さらに、マウスモデルを⽤いた研究ではリン酸化タウが嗅内野に蓄積したマウスは、経路統合能が低下することが⽰された。嗅内野における神経原線維変化と経路統合能低下の関係を確認した。経路統合能の異常は、アルツハイマーの最初の兆候であるとしている。
研究チームは「今後この技術をさらに改良し、通常の⽣活⾏動からアルツハイマー病の予兆を見い出し、アルツハイマー病の予防や治療にさらに役⽴てることを⽬指している」としている。