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高エネとコバルトフリーを両立 横国大研究Gがニッケル系電池材料開発

横浜国立大学と、物質・材料研究機構(NIMS)、住友金属鉱山の研究グループは、新しいニッケル系層状材料 (Li₀.₉₇₅Ni₁.₀₂₅O₂) を開発した。レアメタル「コバルト」を含まない構成だが、高エネルギー密度で長寿命の電池正極材料となることを発見した。電池自動車用の電池材料として応用が期待できそうだ。

コバルトは資源が偏在しており、コンゴ共和国など政情が不安定な国で産出されるためその削減が急務だ。一方で、電気自動車のさらなる普及のため、コバルトフリーと高性能を両立する材料の開発が求められていた。

研究グループはコバルト非含有材料では、充電状態にニッケルイオンが移動することが劣化の要因であることを明らかにした。加えて、構造欠陥を含有するモデル材料を合成。その欠陥を有する材料では充電状態におけるニッケルイオンの移動を抑制可能であると示した。

これら知見に基づいて、実用的な合成法を用い構造欠陥を意図的に導入することを目的として、23%の極少量のニッケルイオンを過剰な組成とした材料 (Li₀.₉₇₅Ni₁.₀₂₅O₂) を合成した 。

この材料を解析した結果、実際に構造欠陥を有しており、充電中のニッケルイオンの移動を抑制できることを明らかにしている。また、コバルト含有試料以上の高いエネルギー密度とサイクル特性を実現しただけでなく、優れた急速充電特性と出力特性もあった。

研究グループは「研究成果は次世代の電気自動車用の電池材料としての応用が期待できる」とコメントしている。