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グリーンランドの氷河上で形成される湖 北大が8年間調査 氷河湖面積、0度以下の日数と関連

北海道大学の杉山慎教授らの研究グループは、AI技術「機械学習法」によって大量の衛星画像約450枚を解析。グリーンランドの氷河上で季節的に形成される氷河湖の位置や大きさを8年間にわたって測定した。

研究グループは解析プラットフォーム「グーグル・アース・エンジン」を用いて、2014~21年まで8年間にわたる湖の変化を明らかにした。

その結果、ヘイルプリン氷河における最大の湖面積(22.8km²)は、トレイシー氷河(7.6km²)の約3倍であると判明。ヘイルプリン氷河は流動が遅いためクレバスが少なく、氷の表面が平坦でくぼ地が多い。そのため、湖が形成されやすい。

また、氷河湖面積の年ごとの変動は積算暖度と良い相関があり、夏期の雪氷融解量に影響を受けて変化すると考えられた。例えば16~19年には湖の面積が大きく広がったが、比較的夏の気温が低かった17、18年はその面積が小さくなった。このような変動は標高800メートル以上の地域で顕著だったという。

湖の季節変動を調べたところ、湖は雪や氷の融解が始まる6月上旬~中旬にかけて形成され、湖の多くが8月下旬までに消失することが分かった。その際に湖水は氷河底面に流入したと考えられるため、氷河の流動速度に大きな影響を与えたと推定される。

杉山教授らは「グリーンランド氷床の将来変動予測、気候や海洋との相互作用への展開、さらにはグリーンランド社会への影響評価にもつながる成果が期待される」としている。