理化学研究所など4機関からなる研究グループは、宇宙観測技術をベースとした放射線源を撮影可能な多層半導体コンプトンカメラを用い、原子核から放出される光(ガンマ線)の偏光を捉えた。原子核の内部構造を明らかにできることを示している。高い感度と効率を備えた革新的手法だという。
研究では原子核の内部構造を調べるため、多層半導体コンプトンカメラの光に対する高い位置決定精度と検出効率に着目。ガンマ線の入射方向を決めた上でその散乱事象を分析できることから、高感度な偏光測定が実現できると考えた。
測定の結果、⁵⁶Fe原子核の第一励起状態から放出されたガンマ線は電気的遷移であり、得られた偏光度も過去の測定結果と一貫性があることが分かった。さらに、多層半導体コンプトンカメラを評価した結果、測定感度が高く、偏光計として実用可能な検出効率を兼ね備えていた。そのため、生成される量が希少な不安定核から放出されるガンマ線の偏光も捉えられる。
研究グループは「高感度、高効率なガンマ線偏光度測定法の確立によって、希少な不安定核を対象としたガンマ線の偏光測定を通し、原子核の内部構造の詳細に踏み込んだ研究展開が可能となる」とコメントしている。