京都大学の末次祥大助教らの研究グループは米コロラド大学と共同で、スピン三重項超伝導体の候補物質であるウラン系超伝導体(UTe₂)における超伝導電子状態を世界で初めて明らかにした。8日付の国際学術誌「Science Advances」に掲載されている。
今回研究グループは、最近育成方法が開発されたUTe₂の超純良単結晶を用いることで不純物による影響を排除して実験を行った。この超純良単結晶を絶対零度(マイナス273度)近くまで冷却し、強い磁場をかけて測定を行うことで超伝導状態での電子状態を調べ、超伝導ギャップ対称性の決定をした。
その結果、超伝導が壊れる磁場の10%程度までの低磁場領域で熱伝導度はほとんど磁場に依存しないことを発見した。これはUTe₂の超伝導状態が超伝導ギャップがゼロになる点を持った状態ではなく、超伝導ギャップが一様に開いた電子対状態を実現していることを示す証拠となる。
末次助教らは「研究で明らかにした一様にギャップの開いた超伝導状態は、これまで信じられてきたものとは全く異なった予想外の結果であり、このエキゾチックな超伝導体の研究におけるターニングポイントになるのではないかと期待している」とコメントした。