東京医科歯科大学の梶弘和教授らと東北大学、熊本大学の研究チームは人の胎盤幹細胞を用いて、胎盤から伸びる絨毛(じゅうもう)に類似した「胎盤オルガノイド」の作製に成功した。創薬などに頼らない医薬品安全性評価法の開発に貢献しそうだ。国際科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」のオンライン版に8日付で掲載されている。
研究では、胎盤で作られた高い増殖能力を持つ「胎盤幹細胞」を培養することにより、絨毛表面の構造を細胞培養により作り出すことを試みた。胎盤形成に関わる成長因子などを培養液に添加して8日間ほど増殖した結果、球状の胎盤オルガノイドを作製することに成功した。
このオルガノイドを解析した結果、実際の絨毛と同様に表面の細胞は融合しており、多くの微絨毛が観察された。さらに、この培養条件をもとに、母体-胎児間で起きる物質移行を評価することを可能とする「胎盤バリアモデル」の開発に成功している。
梶弘教授らはこの結果から「医薬品候補化合物の胎盤透過性を評価することにより、胎児への副作用の小さい新薬の開発につなげられるものと考えられる」としている。