岡山大学の大塚基之教授らの研究グループは、新規のマウス由来胆のうオルガノイドモデルを用いた解析で、このモデルで低発現であったマイクロRNA「miR-34A-5p」を同定。胆のうがんに対してこのRNAを過剰発現させることで抗腫瘍効果を示すこと、その機序の1つとして細胞周期の抑制が関与することを発見した。
胆のうがんは進行するまで症状が乏しいことが多く、手術不能な段階で発見されると5年後生存率は10%と予後不良な疾患だ。薬も限られていることから、新たな方法の治療法の開発が望まれている。
研究グループはマウス正常胆のうオルガノイドと胆のうがんオルガノイドのマイクロRNA発現プロファイルを比較。胆のうがんオルガノイドで発現低下の大きかった「miR-34A-5p」に着目した。
ヒト胆のうがん細胞株を使った実験によると、miR-34A-5pの過剰発現により有意に細胞増殖が抑制された。また細胞周期の異なるステージにある細胞比率の比較によって、このRNAが過剰に現れると初期段階の細胞周期を停止させるとされ、増殖抑制が生じた一因だと分かった。
そのプロセスについて、miR-34A-5pによるサイクリン依存性キナーゼ 6(CDK6)をはじめとした細胞周期に関わる経路の減少が関与していることが明らかとなっている。
加えて、マウスの皮下腫瘍モデルでmiR-34a-5pを腫瘍周囲に投与すると、腫瘍増殖が抑制され摘出した皮下腫瘍内のCDK6発現は有意に低下していることを確認した。
研究グループの堤康一郎助教は「難治な胆のうがんに対する新たな治療戦略の1つとして、今後臨床応用へと展開できるよう改良を続けていきたい」とコメントしている。