九州⼤学の熱⽥勇⼠講師らの研究グループは、四肢前駆細胞(LPC)マーカー遺伝子の発現が誘導された細胞を「rLPC」と命名した。rLPCはその遺伝⼦発現プロファイルのみならず、内在性のLPCと同様の分化能を持つことが明らかにしている。
これまでマウスやニワトリ胚を⽤いた研究から、肢芽形成に関わる遺伝⼦や肢芽の成⻑を促す「FGF」などの分泌因⼦が発見されてきた。だが、LPCと他の側板中胚葉由来組織を区別する細胞内因⼦は同定されていなかった。研究チームは肢芽(しが)で発現する遺伝⼦で、⾮四肢由来の細胞をLPC様細胞に転換できる因⼦「リプログラム因⼦」を認定することを⽬指した。
研究グループは、18個の候補遺伝⼦を因⼦の中にリプログラム能を持つものが含まれるか調べるため、肢芽由来ではないマウス胚性線維芽細胞に18因⼦すべてを導⼊した。その結果、LPCをラベルするマーカー遺伝⼦の発現が認められた。
さらに、リプログラム因⼦を絞り込んだところ転写因⼦「Prdm16」、「Zbtb16」、RNA結合因⼦「Lin28A」の導⼊がLPCマーカー遺伝⼦を発現させるのに⼗分だと分かった。
LPCマーカー陽性となったリプログラム細胞「rLPC」の遺伝⼦発現プロファイルを調べたところ、⼀部のrLPCは内在性のLPCと酷似したプロファイルを持つことが明らかとなっている。
また、リプログラミング過程における遺伝⼦発現パターンの変化を解析した結果、リプログラミングに成功した細胞では、初期段階でたんぱく質「E3ユビキチンリガーゼLin41」の発現が上昇すること⽰された。
そこで、PZLに加えLin41も組み合わせて線維芽細胞へ導⼊したところ、リプログラミング効率の上昇が⾒られた。最後に、rLPCが本来LPCが形成すべき細胞種へと分化するかを確認すると、rLPCもLPCと同様に軟⾻や腱(けん)前駆細胞へと分化することが確認された。
研究グループは今後について「ノックアウトマウスを作製するなどして、同定したリプログラム因⼦がLPC の特定化に実際に必要か否かを検証していく」としている。