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ホモ・サピエンスの石器はいつ、どうして革新したのか 名大教授らが石器の刃部獲得効率の変遷調査

名古屋大学博物館の門脇誠二教授らの研究グループは、明治大学など4機関との共同研究でホモ・サピエンスがユーラシアに拡散した約4~5万年前の文化進化について、石器の刃部(じんぶ)獲得効率という点から明らかにした。英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に7日付で掲載されている。

ホモ・サピエンスが航海や海産、森林資源の利用をしていたことが明らかになっている。だが、多様な文化や技術の発展がどのように生じたのかはほとんど分かっていない。

この課題を検討するため研究グループは、石器技術に着目。石器の技術がいつ、どうして革新したのかを確認した。

分析の結果、ユーラシアに拡散し始めた上部旧石器初期(約4.5万年前)のホモ・サピエンスが使っていた石器は重厚で、刃部獲得効率が低かったことを初めて明らかにした。この頃の効率は、それ以前の中部旧石器後期より悪いか同程度だという。

また、その後の上部旧石器前期(約3万~4万年前)において、能率は上昇したと分かった。この時期は、小石刃と呼ばれる小型石器の技術が発達したのが特徴。石器形態と刃部獲得効率の相関を調べた結果、比率の増加は石器の小型化によって達成されたことが判明した。

門脇教授らは「本成果は、ユーラシアに広域拡散したホモ・サピエンスの文化進化が一度の革命的出来事だったのではなく、複数の段階や試行錯誤を伴っていたことを示唆している」と説明している。