東京大学と東北大学は共同で、磁石の中で短い時間しか存在できないと考えられていた磁気振動の情報が長時間存在できる機構を発見。それを取り出せることを突き止めた。これにより磁気情報デバイス開発の道が新たに拓けたとしている。
研究では外部からの力を絶った後の磁気振動の情報を取り出す測定法「ポンプ-プローブ測定」を開発した。この方法は、ブランコの立ちこぎと同じ原理「パラメトリック励起」を用いる。立ちこぎでは、身体を上下に動かすとブランコを大きく動かせる。同様に、パラメーターを周期的に変化させ、半分の周波数の振動を引き起こすのがこの方法だ。
この測定を繰り返し、磁気振動の情報(コヒーレンス)がどれだけ長く存在できるかを調べた。最初にパラメーターと同じ周波数を加えた場合では、約100ナノ秒後にはコヒーレンスが失われ、0位相を読み出す確率が50%になった。
一方、最初にパラメトリック励起を行うと、約5000ナノ秒という長い時間まで何度も振動することが分かった。通常の意味における磁化の歳差運動は約100ナノ秒で失われるので、この結果はコヒーレンスが約5000ナノ秒隠れて存在していたことを示唆している。
研究グループは「磁石に隠されていた磁気振動を発見し、その情報を取り出せたことで、磁気情報デバイス開発への可能性を拓いた」とし「今回発見した情報保持機構は、スピントロニクスや磁性の分野だけでなく、材料物理学・物性物理学の広範囲に影響を与える」とコメントしている。