金沢大学の石橋公二朗助教らの共同研究グループは、肺がんが脳に転移するためのたんぱく質の特定に新手法を用いて成功した。これを標的とすることで脳に転移したがんの増殖を抑えられると解明している。
研究グループはがん細胞とグリア細胞とのやり取りを詳細に解析するための新たな研究手法「MGS法」を開発した。この方法はマウス由来の脳で神経細胞の活動を支えるグリア細胞を極めて柔らかいゲルで培養して、これまで困難だった同細胞「ミクログリア」の長期培養が可能としている。
新たな手法による研究で、肺がん細胞が脳に転移する際に重要な役割を担うたんぱく質として「mGluR1」を同定した。脳に転移した肺がん細胞はグリア細胞「アストロサイト」との相互作用によってmGluR1を発現させる。肺がん細胞はmGluR1の作用によって脳内で増えていくことが分かっている。
アストロサイトからの分泌物が細胞にmGluR1の発現を誘導すること、誘導されたmGluR1が肺がん細胞の増殖に重要な役割を担う「上皮成長因子受容体(EGFR)」と結合して、活性化していることが明らかとなった。
研究グループは「これらの研究成果は将来、脳転移を来した肺がん患者さんに対する新たな治療戦略の開発につながる」と説明している。