東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男教授と政策科学分野の土井理美助教の研究グループは、㈱国際電気通信基礎技術研究所との共同研究で、抱き枕型通信メディア「ハグビー®」を用いた就寝前の3分間の呼吸法によって、成人の睡眠の質が改善されることを明らかにした。この研究は革新的自殺研究推進プログラム委託研究(令和 3 年度)の支援のもとで行われたもので、研究成果は、国際科学誌 Sleep and Breathingオンライン版で発表された。
わが国の成人の約3割が睡眠の問題を抱えており、身体的・精神的健康に悪影響を及ぼすことがわかっている。睡眠の質を改善させる方法として薬物治療があるが、副作用や薬への依存性などがあることから、薬物を使用しない心理的・行動的介入が第一選択として推奨されている。
しかし、効果が示されている心理的・行動的介入は、介入を提供できる人が不足していたり、介入期間が長いために継続して介入を受け続けることが難しかったりと、限界がある。
睡眠の質の改善に効果があるとされる呼吸法は、比較的簡単に個人でできる介入だが、自分一人で続けなくてはならないこと、楽しさがないことから、睡眠の質が改善されるまで呼吸法を継続することが難しいという課題があった。
そこで、ロボット人間工学から開発された抱き枕型通信メディア「ハグビー®」を用いた就寝前の3分間の呼吸法を開発。高さ75㌢、重さ600㌘のハグビーは、ポリスチレンミクロビースが充填され、スパンデックス繊維で覆われており、スマートフォンを収納できるサイドポケットが備えられている。
スマホからは、男性または女性の静かで心地よい声でガイドされる呼吸法(3秒息を吸い、1秒間息を止めて、4秒間息を吐く)が流れる。4週間の介入中は、研究チームがSNSを通して呼吸法を実践するよう、週に1回のリマインドメッセージを入れた。
この研究では、睡眠の質が悪いと報告する外来患者71名を、毎日就寝前にハグビーを用いた3分間の呼吸法を4週間行う介入群(32名)と、何も行わない対照群(39名)にランダムに振り分け、介入によって睡眠の質が改善されるかどうかを検証した。