東北大学の藪浩教授と化学メーカー「綜研化学」の研究グループは、高分子の相分離と静電相互作用を用いた自己組織化プロセスにより、高い光学密度をもつ「コンポジット微粒子(GNDP粒子)」を作製。そこにインフルエンザ抗原に対する抗体を結合することで、抗原を高感度に検出できる探針となることを見いだした。
研究グループはGNDP粒子をウイルスを検出するための物質「プローブ」として用いれば、大きな吸光度と分散性を兼ね備えた抗原抗体反応用プローブとして応用できるのではないかと考えた。
グループはまずアミノ末端ポリブタジエン(PB-NH₂)とポリスチレン(PS)からなる「コアシェル型粒子」を独自に開発したSORP法により作製した。得られたコアシェル型粒子はPSがコア、PB-NH₂からなるシェルを持ち、PB-NH₂のアミノ基により、中性付近の水中で正に帯電する。
そこに5、10 、20ナノメートルの粒径を持つ負に帯電した金ナノ粒子を混合することで、各金ナノ粒子が表面に密に配列したGNDP粒子を作製。吸光度を比較したところ、20ナノの粒径を持つ金ナノ粒子をコンポジット化したGNDP粒子が大きな吸光度と分散性を維持していることが分かった。
得られたGNDP粒子を用いて市販されているインフルエンザキットを利用し、検査プレートとGNDP粒子の表面にインフルエンザ抗原に対する抗体を結合させた。そして、抗原検出法「サンドイッチアッセイ」を行うことで、GNDP粒子がインフルエンザ抗原検出のプローブとして応用可能か検証した。
その結果、GNDP粒子は抗原濃度に対する感度が通常の抗原検出法「ELISAアッセイ」に使用される呈色(ていしょく)剤や金ナノ粒子と比較しても高く、金ナノ粒子単体では測定が難しい低濃度領域でも分析可能であることが示された。
研究グループは「この粒子をさまざまな疾病感染症マーカーとして活用することにより、高感度で安価な疾病感染症検査キットなどの開発を進めていく予定」としている。