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口腔内細菌「アクチノマイセス・オドントリティカス」が大腸がんの発生に関与 東大研究Gが可能性示唆

東京大学の宮川佑特任臨床医らの研究グループは、口腔内細菌「アクチノマイセス・オドントリティカス」が大腸がんの初期過程に密接に関与することを明らかにした。大腸がん発症に対する介入や予防戦略の開発に新たな道を開く可能性があるとしている。

アクチノマイセス・オドントリティカスが大腸がんの発がん初期段階の患者の便に特徴的に多く存在することは報告されていた。だが、がんとの因果関係は不明であった。

近年、細胞が放出する細胞外小胞が細胞間の情報伝達や疾患に関与することが知られてきている。腸内細菌も「膜小胞(MVs)」と呼ばれる細胞外小胞を産生することが知られている。

研究グループは、オドントリティカスが菌体外に放出するMVsが病原因子となるのではないかと考えた。この細菌のMVsを抽出し、細胞のノックアウト実験から、MVsがd細胞表面に発現する「Toll 様受容体2(TLR2)」に作用し炎症性シグナルを高めることを示した。

このMVsは大腸上皮細胞に炎症を惹起するだけでなく、腸管上皮細胞内で活性酸素種の産生促進を介して DNA損傷を引き起こすことを見いだした。培養細胞株だけでなく、ヒトiPS細胞由来のミニ腸においても腸管上皮細胞にDNA損傷が引き起こされた。

さらに、MVsをマウスの大腸に経肛門的に注入し続けると、腸管上皮細胞にDNA損傷が起こされるとともに大腸にがんの前段階とされる「異形成」が発生した。DNA損傷につながる活性酸素種の増加には、オドントリティカス由来のMVsの大腸上皮細胞内への取り込みが必須であることを同定した。

細胞が細胞外の物質を吸収する機構「エンドサイトーシス」によって腸管上皮細胞内に取り込まれたMVsは細胞内のミトコンドリアに局在し、ミトコンドリアの機能障害を引き起こすことによってミトコンドリアでの活性酸素種の過剰な産生をもたらす分子機構が示されたとしている。

研究グループは「慢性炎症とDNA損傷惹起を介した、オドントリティカスが放出するMVsと大腸がん発症初期段階との関連性を明らかにするもの」と結論付けた。