理化学研究所と神戸大学の共同研究グループは、たんぱく質「生体分子アクチン」による自発的な細胞骨格形成を空間的に制御できる技術を開発した。
研究グループは、細胞膜上でナノメートルサイズのアクチン分子が、細胞骨格と呼ばれる自身の1000倍以上大きなマイクロメートルサイズのネットワーク構造を組み上げるアクチンの仕組みに着目した。
そこで、半導体製造に使われる光をあてて加工する「光リソグラフィー技術」によりアクチンネットワーク形成を誘導する領域の形やサイズなどのパターンを自在に制御できる人工生体膜を作製し、この膜上でさまざまな形状のアクチンネットワークを形成させることに成功した。
この技術を使うことで、細胞膜上でアクチン分子が骨格構造をまとめて、細胞の動きや形を制御する仕組みを、膜領域の物理的条件としての形とサイズという新しい観点から理解することが可能となる。
研究グループは「アクチンが担う細胞の運動や変形など基本的な生命機能の理解だけではなく、がん細胞の浸潤や転移など、アクチンが関わるさまざまな病気の原因の解明や治療法の開発への貢献が期待できる」とコメントしている。