東京大学の岩田容子准教授らと青森県営浅虫水族館の研究グループは、イカの一種「エゾハリイカ」の雄が求愛時に墨を使って背景を操作することで、交尾を求める行動「求愛ディスプレイ」を視覚的に際立たせていることを明らかにした。
エゾハリイカは求愛のクライマックスには、背景に墨を吐いて白く輝く体色で体全体を伸ばす行為を行うことが明らかになった。墨は周辺環境を暗くして周囲を均一にすることから、ディスプレイを目立たせる効果があると考えられている。
雄は雌よりも大きな墨袋を持っていることも判明していたことから、求愛に墨を用いる行動は繁殖成功を高めるための適応であると推測できた。
岩田准教授らは「エゾハリイカは、本来は捕食回避のために使用する墨を繁殖行動に流用することで、即時的に低コストで周囲の視覚環境を操作するという高い柔軟性を持っていることが示された」としている。