北海道大学と筑波大学、早稲田大学理工学術院の研究チームは、チリにあるアルマ望遠鏡を使った観測により129億光年先の銀河で輝く天体「クェーサーJ2054-0005」による分子ガスの噴き出しを捉えた。初期宇宙の銀河の成長に大きな影響を与えていた強い証拠を世界で初めて発見している。1日付の学術誌「アストロフィジカルジャーナル」に掲載されている。
研究チームは、クェーサーからの分子ガスのアウトフロー(噴き出し)をガス中のヒドロキシルラジカル(OH)分子が作る「影絵」として検出した。絵の様子を調べたところ、星の材料となる分子ガスが銀河の外へ激しく噴き出していることが分かった。
その速度は毎秒1500キロメートルにも達し、流出しているガスは1年間あたりで太陽質量の1500倍に相当する量になる。この流出量は銀河の中で新たに作られる星と比べて大きいことも明らかになった。
研究チームは、この銀河から1000万年ほどで星の材料となる分子ガスが枯渇し、今後新たな星を作りにくくなると考えているという。この成果は、「分子ガスの噴き出しが銀河の星形成を抑制するという理論予想を裏付ける重要な成果」だとしている。