名古屋市立大学の齊藤貴志教授らの研究グループは、炎症プラットフォーム「インフラマソーム」と神経炎症状態は前臨床期におけるアミロイド病理の形成には関与していないことを明らかにした。既存の考え方を反証し、非炎症性のグリア応答が前臨床期におけるアルツハイマー病の病態形成に重要な役割を果たしている可能性を示した。
研究グループはアルツハイマー病モデルマウスを作製。アミロイド病態に関連するミクログリア(DAM)におけるNF-kB経路およびインフラマソーム関連遺伝子の発現の変化を確認した。
それによると、アミロイドβの蓄積が高まっているマウスの脳内ではDAMの増加が認められた。だが、これら集団におけるNF-kB及びインフラマソーム関連遺伝子の発現は非常に低かった。つまり、マウスの脳内ではグリア細胞の活性化は確認されたが、炎症性応答は高まっていなかった。
これは2013年にドイツで行われた研究に反しており、それはマウスの違いによるものかもしれないため、既報同様のマウスを使って解析した。それでもNF―kBインフラマソーム関連遺伝子の発現は増えず、アミロイド病理形成にNLRP3の有無は関与していないことが分かっている。
齋藤教授は「抗アミロイドβ抗体薬レカネマブが承認されたことで、前臨床期からアミロイドβを減少させることの有効性が示されている昨今、インフラマソームの阻害がアルツハイマー病に対する薬剤標的とも考えられてきたがこれを再考する必要がある」と指摘している。