横浜市立大学とライオン、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、国際宇宙ステーション(ISS)での長期宇宙滞在ミッションに携わった宇宙飛行士の血液を採取した。そして、特定の条件下で発現しているたんぱく質「プロテオーム」を解析、新たな知見を得た。宇宙飛行士の健康リスクを予測する指標の作成に寄与できるという。
宇宙飛行士の身体内において誘発される生物学的適応に関連するメカニズムは、ほとんど解明されていない。研究では宇宙飛行士から飛行前やISS滞在中、宇宙飛行後に血清を計12ポイントで採取して、血清たんぱく質の量的変動を分析した。
その結果、ISS滞在直後に血清中量の減少を示したたんぱく質のほとんどはISS滞在1カ月後には飛行前のレベルにまで回復し、このような減少反応の多くは一過性のものであることが分かった。
一方で、ISS滞在直後に血清中量の増加を示したたんぱく質の多くは、飛行直後に飛行前のレベルまで減少した。
3者はたんぱく質の量的変動は、打ち上げによるストレス応答や宇宙空間での微小重力などの環境ストレスに対する生体内組織の適応機構を反映している可能性があるが、その影響は短期的なものであると考えている。
研究チームは「長期宇宙滞在ミッションに伴う生体内適応メカニズムに関する新たな知見の発見につながり、宇宙飛行士の健康リスク増加を予測できる客観的指標の発見に貢献する」としている。