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遺伝的個体差がALSの病態進行に影響を 名大研究Gが発見 免疫反応性に個人差

名古屋大学の山中宏二教授らの研究グループは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスを使った実験を実施。全身の免疫環境などの違いが脳内免疫担当細胞である「ミクログリア」の細胞集団構成や神経保護性の疾患関連ミクログリア(DAM)の出現誘導に影響を与えることで病態進行を変化させられることを新たに発見した。

ALSは運動をつかさどる運動神経細胞の変性と細胞死による脱落によって全身の筋力が低下することで発症から2〜5年で死亡する神経変性疾患だ。ALSにおいてミクログリアの構成が変化すると示唆されていたが、病態に与える影響は明らかになっていなかった。

グループは遺伝的に異なる実験マウス系統「C57BL/6系統」と「BALB/ⅽ系統」では、ミクログリアの細胞集団構成が異なることを発見した。そこで、モデルマウスの系統をC57BL/6系統(ALS(B6))から BALB/ⅽ 系統(ALS(Balb))に変化させた。

すると、Balbではミクログリアの細胞数の減少や神経栄養因子を産生するDAMの出

現誘導が減弱し、B6に比べALS病態の進行が加速することを発見した。遺伝的個体差に由来する全身の免疫環境がミクログリアの細胞集団構成に影響を与えている可能性を示唆するデータも得られている。

この研究結果は、個体差に由来する免疫環境などの違いがミクログリアの細胞集団構成や神経保護性のDAMの出現誘導に影響を与えて病態を変化させていることを示している。

山中教授らは「ミクログリアの細胞集団構成や神経保護性のDAMの出現誘導に関与する免疫環境因子などに着目することで、新規バイオマーカーの同定や個別化医療の創出にもつながる」と説明している。