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半導体量子ドットの新共同効果 京大研究Gが発見 太陽電池や光エネルギーの有効利用に期待

京都大学の田原弘量特定准教授らの研究グループは、半導体量子ドットを集めて結合させることで現れる新しい協同効果を発見した。その効果を利用して非線形光電流を増大させることに世界で初めて成功している。31日付の国際学術誌「ネイチャー・ナノテクノロジー」にオンライン掲載された。

半導体量子ドットはナノメートルサイズの微小な結晶であり、2023年のノーベル化学賞の受賞対象となった材料だ。これは光を吸収して電気を取り出す太陽電池や、好きな色に光らせる発光ダイオードなどの光電デバイスの材料として注目されている。

田原特定准教授らの研究グループは量子ドットをたくさん集めた集合体がどのような物性機能を持つのかを明らかにするため、量子ドット同士を有機分子で結合させた「量子ドット膜」を作製。光照射によって量子ドットに作られた電子を電流として取り出す実験を行った。

量子ドット膜から取り出される光電流の量子干渉信号を計測したところ、量子ドット同士をつなぐ有機分子の長さを短くしていくと、非線形な光電流信号が増大していく現象を発見した。

照射するレーザー光の強さと有機分子の長さを変えながら詳細に計測することで、隣り合う量子ドットが協同的に応答し、それが光電流信号の増大を引き起こしていることを突き止めている。

量子ドット1個あたりに作られた電子の数で規格化しても信号が増大したことから、単に電流が流れやすくなったという範囲を超えた新たな現象であることが判明した。有機分子の長さを炭素原子2個分まで短くすることで、集めた量子ドットが互いに協力し合う状況を作り出し、電気信号を増大させることに成功している。

田原特定准教授らは「赤外線のような低いエネルギーの光を有効利用した光センサーや太陽電池などの新しい光電デバイス技術につながる」と述べている。