北海道大学の山口篤准教授らの研究グループは、海氷融解の早い2018年の北部ベーリング海で、小型動物プランクトンの増加とそれに伴う生態系内の高次生物へのエネルギー転送効率と生産性の低下を明らかにした。今後の地球温暖化に対する海洋生態系の予測精度向上にもつながりそうだ。
これまでの研究で、18年に植物プランクトンブルームの遅延、動物プランクトンの群集組成の変化が報告されていますが、生態系内のエネルギー転送がどのように変化していたのかについては十分に理解されていなかった。
そこで研究グループは、海氷融解が平年並みであった17と18年の夏季に、北部ベーリング海における動物プランクトン群集のサイズ組成を調査した。
その結果、小型種の増加、それに伴うエネルギー転送効率と生産性の低下を発見された。これにより海氷融解早期化が、食物連鎖を支えるプランクトンを変化させて魚類や海鳥などの捕食者へ悪影響を及ぼしている可能性が高いことを明らかにしている。
山口准教授らは「本海域は温暖化により将来的にも大きく海氷が変動する可能性があるため、環境変化に対する海洋生物の応答の理解が進むことで将来にわたる海洋生態系の維持や水産資源の持続的利用につながる」としている。