東京理科大学の秋津貴城教授らの研究グループはサレン錯体の爆発性の原因を深層学習で探った。その結果、サレン部位には「特徴がない」傾向を突き止め、爆発性は過塩素酸部位の化学結合や構造に起因する可能性が高いことが示唆されている。
過塩素酸塩はわずかな衝撃や熱でも爆発に至る危険性があるが、背景にある詳細なメカニズムは分かっていない。そこで研究グループは結晶構造と分子相互作用の特徴から、過塩素酸塩化合物の構成成分は、爆発性を有する成分とそうでない成分に区別できるという前提に基づいて研究を行った。
研究ではまず、結晶構造から結晶内の複雑な相互作用を固有のフィンガープリントとして視覚化できる「Hirshfeld」表面解析を用いて、結晶構造データベースに登録されている金属サレン錯体を対象に分子の状態を可視化しました。得られた特徴を人工知能を用いて解析し、爆発性の原因となる可能性がある成分を探索した。
その結果、サレン部位には特徴がない傾向が見出されたことから、爆発性は過塩素酸部位の結晶構造や相互作用に起因することが示唆されている。
秋津教授らは「今回提案した手法は、爆発性だけでなく、さまざまな物性と結晶内の相互作用との関係を明らかにする上で極めて重要なアプローチになる」と評価。「『Hirshfeld』フィンガープリントプロットを活用した解析手法は、興味のある分子を選択するための指針を提供する有望な方法になる」とコメントした。