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ブドウ根頭がんしゅ病「雪で覆われると菌密度が高く維持」 農研機構・北大のチームが発生拡大の原因解明  

農研機構は北海道大学と共同で、積雪地帯におけるブドウ根頭がんしゅ病の発生拡大の原因が高い病原菌密度であることを解明した。ブドウ樹が雪で覆われることで病原菌が保存され、樹の表皮やがんしゅ内部の菌密度が高く保たれることが初めて明らかになっている。

近年、全国各地で根頭がんしゅ病の発生がブドウの安定生産の脅威となっている。効果的な防除方法を開発するために、多発要因を解明することが求められている。研究チームは2021~23年にかけて北海道のブドウ農家などで現地調査をした。

がんしゅ組織と表皮組織で継続的に調査をした結果、両方から高い密度で病原菌が検出された。また、密度は年間を通じて大きく変動していた。そこで、環境要因の分析を行ったところ、特に気温の変動が関連していると判明した。

次に季節によって変わるのか考察するために分析したところ、秋から冬にかけて菌の密度が増加することが分かった。また、雪が降っている冬は変化が少なく、高い密度が保たれていることも明らかとなっている。積雪により密度が高く維持されると考えられた。

確認のため、雪に覆われている部分とそうでないところで、病原菌の密度を比較した。覆われている部分からは約100倍の密度で病原菌が検出されている。雪で菌が冬眠し、高い密度が維持される環境では、凍害などによる傷がなくても病気が発生しやすいとしている。

農研機構の川口章上級研究員は「原因究明の次はこの病害をしっかり防除することが仕事ですので、今後も精力的に研究を行い、農業生産者の皆様のお力になれるように精一杯努めてまいりたい」と話した。

ブドウ根頭がんしゅ病の症状
(赤い矢印が、形成されたこぶ)