慶應義塾大学の伊藤裕前教授らの研究グループは、抗老化候補物質「ニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)」が健康な成人男性において長期間安全に内服可能であることを明らかにした。また、糖代謝改善作用を示している可能性があることを明らかにした。
研究では40~60歳以下の男性14人を対象にNMNを8週間、朝食前に250ミリグラムを経口投与した。
その結果、接種期間に応じて長寿遺伝子を活性化する「ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD+)」が増加した。血圧や脈拍、体重などは変わらず、目の機能や睡眠にも影響がなかった。血液・尿検査でもNMN内服に起因する変化は出ていない。
経口ブドウ糖負荷試験による耐糖能検査では、有意な違いは認められなかった。だが、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌量が多い3人は、NMNの内服に伴いインスリンの過剰な分泌が是正される可能性が示唆されている。
これらから、8週間投与されたNMNは成人男性にとっても安全に使用が可能であり、耐糖能が軽度でも障害されている場合は改善効果をもたらす可能性があると考えられる。
伊藤教授らは「今回の臨床研究によって、NMNを健康なうちから長期間安全に投与できることが確認され、人におけるNMNを利用した老化関連疾患の発症予防に向けた栄養学的アプローチによる研究の発展が期待できる」と評価している。