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職場で歯科検診を受けた労働者は歯科受診による欠勤が少ない傾向―職場での歯科検診機会の提供の有用性を示唆(東京医歯大)

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野の増子紗代大学院生、財津崇助教、相田潤教授の研究グループは、職場での歯科検診が歯科受診による欠勤日数の減少と関連することを明らかにした。これまで職場の健康増進プログラムがプレゼンティズム(出勤している労働者の健康問題による労働遂行能力の低下)を減らし、生産性を向上させることが報告されていた。歯科検診の場所と病気による欠勤(アブセンティズム)との関連を調べたこの研究により、職場での歯科検診は歯科受診による欠勤日数の低下と関連することが世界で初めて明らかになった。歯科検診を職場で提供しても、欠勤日数の改善があるため、職場での負担は大きくない可能性を見いだした。

この研究成果は、国際産業衛生誌「ジャーナルオブオキュペーショナルヘルス」のオンライン版で発表された。

【研究概要】

この研究は、2017年3月にオンライン自記式アンケート調査を実施した。3930人(男性2057人、女性1873人)の労働者(平均年齢 43.3±11.7 歳)のうち、職場で歯科検診を受けた人は歯科医院受診による欠勤日数(仕事を欠勤・早退・遅刻して通院した日数)が少ない傾向がみられた。

過去1年間の歯科医院受診による欠勤日数は、歯科医院で歯科検診を受けた人で 0.57±2.67日、職場で受けた人で0.21±1.20日。共変量で調整した結果、職場で歯科検診を受けた人は、歯科医院で歯科検診を受けた人よりも欠勤日数が0.35日(95%CI、0.12-0.58)少なくなった。

こうしたの疫学研究の結果から、歯科検診の実施場所が欠勤の重要な因子であり、関連する変数を調整しても職場で歯科検診を受けた人は、歯科医院で歯科検診を受けた人に比べて、歯科受診による欠勤が少ないことが明らかになった。

【研究成果の意義】

この研究の欠点として、歯科医院で検診を受けた人の中には、歯科疾患の治療で受診をしたため欠勤が多い可能性がある。しかし、職場で歯科検診が提供されている場合、健康教育や歯科疾患の早期発見・早期治療により、欠勤が少なくなる可能性がある。成人は歯周病やう蝕を有する人が極めて多く、国全体の65歳以下の歯科医療費は、がん、循環器疾患、呼吸器疾患、糖尿病や精神疾患のそれぞれの医療費よりも大きい状況。

今回の研究から、歯科検診を職場で提供しても、欠勤日数の改善があるため、職場での負担は大きくない可能性がある。産業保健や健康経営の中に歯科保健を入れていく一つの論拠に今回の結果はなると考えられる。